公的年金の不足分を補うための商品としては、個人年金が一般的商品になります。ところが、ここ最近は利回りが特に低いため魅力的とは言えない状況が続いています。そうした中、銀行窓口での販売力もあり、外貨建ての一時払い年金を検討される方が増えてきています。

 

外貨建ては、日本の利回りと比べると高利回りのため、とても魅力的に映ります。この点だけを見れば契約に前のめりになりがちですが、そこはやはりデメリットもありますので冷静な対処が必要になります。

 

そこで今回は、契約される前に「外貨建て個人年金」のメリットとデメリットについて知っておくべき点について解説してみましたのでご覧ください。

 

2016/10/24 12:25:24

外貨建て個人年金とは

外貨建て個人年金とは、「外貨建て」+「個人年金」になります。個人年金については、公的年金の不足分を補うために個人で行う積立型の年金であることはみなさんご存知かと思いますので、ここでは外貨建てについて説明します。

 

外貨建てとは?

外貨建てとは、購入したものの代金や利息、満期金などの支払い(決済)をドルやユーロなどの外国の通貨で行うことをいいます。日本円以外のものが外貨になりますから、ドルやユーロ、ポンド、元、オーストラリアドルなどが該当します。

 

通常、保険会社が販売している個人年金保険は、「円入金特約等」を付加して、円で支払ったものをその時の為替レートに換算して入金が行われます。よって、入金する際や満期等でお金を引き出す際にも日々為替相場の変動の影響を受けることになります。受取る際には、日本円で一括での受取り、または積立金を原資として年に1回ずつ受取る年金形式、外貨そのもので受取ることもできます。外貨建て⇔円建。

外貨建て個人年金のメリット

まずは、外貨建て個人年金のメリットについてご紹介します。

 

メリット1

外貨建て個人年金のメリットは、やはり「高利回り」にあります。
ただし高利回りといっても、最近(2016年10月)では、高い利回りで知られるオーストラリアであっても10年満期の年金で1.2%程度です。アメリカにおいては、0.8%ほどになっています。

 

それでも日本の個人年金の利回りに比べればマシかもしれませんが、この程度の利回りならば、商品やリスクの程度は異なりますが、こちらの記事にあるようなソーシャルレンディング商品や次の項目で紹介していますアメリカ国債(ゼロクーポン)の債権もありますので考えてしまうところではあります。

 

メリット2

メリット2点目は、積立利率が最低保証されている点にあります。そのため保障されている利率を下回ることはありません。

 

メリット3

メリット3点目は、海外でのロングステイや海外旅行など頻繁にされる方は、年金原資を外貨で一括、あるいは分割で受取り、銀行の外貨口座に入金して利用することができます。この場合は、為替変動のリスクを気にしないですみます。

 

メリット4

メリット4点目は、通貨の分散ができる点があります。
円安やインフレになったときに日本円だけの保有に対してリスクヘッジができます。

 

メリット5

メリット5点目は、税金の扱いです。契約形態にもよりますが、死亡保険金は相続税扱いができるので、他の死亡保険金等との合計額のうち「500万円×法定相続人の数」が非課税扱いになります。

 

メリット6

メリット6点目は、支払った保険料は、「一般の生命保険料控除」が使えます。
ただし、一時払いの場合は、支払った年のみが該当します。

 

 

外貨建て個人年金のデメリット

外貨建て個人年金のデメリットについてご紹介します。

デメリット1

デメリット1点目は、通貨を外貨に交換、あるいは外貨を円に交換するために為替手数料が発生する点があります。商品によって取り扱いは異なりますが、入金方法によって以下のような手数料が発生します。
  • 銀行で日本円を外貨に交換して保険会社に入金する場合には、対顧客電信売買相場仲値(TTM)と対顧客電信売相場(TTS)の差額負担があります。
  • 年金を受け取る際に、外貨口座に入金する際は、為替手数料は発生しませんが、そこから日本円にする場合には、為替手数料が発生します。
  • 外貨建て個人年金の特約として用意されている「保険料円入金特約」を利用して入金をする場合には、保険会社の指定する為替レートを使いますが、この為替レートと対顧客電信売買相場仲値(TTM)の差額負担があります。
  • 円支払特約を使って、年金を円で受取る際には、保険会社指定の対顧客電信買相場(TTB)と対顧客電信売買相場仲値(TTM)の差額を負担します。

たとえば、銀行を利用して入金を行う場合ですが、A銀行のドル円の為替レートが、円からドルに交換(TTS)するのが、104.13円でドルから円に交換(TTB)が103.63円だとします。

この場合に、対顧客電信売買相場仲値(TTM)は、(TTS+TTB)/2で算出されますから、103.88円が対顧客電信売買相場仲値(TTM)になります。

よって、この場合には、円からドルに交換(TTS)する、ドルから円に交換(TTB)ときには、その差額となる0.25円の為替手数料を負担することになります。

いずれにしても大手銀行では入金時だけでなく出金時の為替手数料も高いので、ソニー銀行などで口座を開設すれば、米ドルやユーロは15銭、オーストラリアドルは45銭のコスト(基準為替コスト)ですみます。また、外貨普通預金残高は、Visaデビット付きキャッシュカード「Sony Bank WALLET」を使えば200以上の国と地域でのショッピングができるほか、海外ATMからも引き出すことができるので便利です。詳しくはこちらのソニー銀行のページをご覧ください。

デメリット2

デメリット2点目としては、諸費用の負担があります。諸費用としては、各保険会社の年金商品によって異なっていますが、解約控除費用、保険関係費用、年金管理費用などがあります。

解約控除費用とは
解約控除費用とは、満期時前に解約したときに控除される費用をいいます。
たとえば、マニュライフ生命のこだわり個人年金(毎月積み立て)の解約控除率の計算式は、「積立金×36%×(1-経過月数/120)」となっています。

ですから、もしも1万円の積立で1年目で解約したら、12万円×36%×0.9=38,880円が控除されるので、120,000円が81,120円として返金されることになります。しかながら円建ての年金や生命保険でも解約すれば元本までは戻りませんから外貨建て個人年金に限ったことではありません。

保険関係費用とは
保険関係費用とは、死亡保障、保険契約締結などにかかる費用をいいます。所定期間の指標金利から所定の%の範囲で控除されます。

そのため、保険の機能が不要であるならば、そこの国の国債を購入したほうが高い利回りを確保することができます。

例えば、野村証券の既発外貨建債券(別サイトへのリンク)に、アメリカ国債(ゼロクーポン)の債権があります。ゼロクーポンとは表面利率がない債券なのでゼロクーポンと呼ばれています。その代わりに、100ドルのものを80ドルなどで割引して購入ができ、償還時には100ドルが確定して戻ってくるのが特長です。つまり、この差額が利益になります。

この野村証券のページに、2022/08/15償還(残存期間5年9ヶ月)購入価格が93.57ドル(利回り1.140%)のゼロクーポン債が掲載されています。これは、93.57で購入したものが5年9か月後に100として償還されることを意味します。

なので、正直言って、米国ドル建て個人年金を契約をするよりもこのアメリカ国債(ゼロクーポン)を購入されたほうが預けておく期間も短く、利回り的にもメリットがあります。

ただし、ゼロクーポン債は、販売数量が決まっているため購入できないこともありますし、最低が1000通貨単位での販売だったりするため、毎月積立てをしていく外貨建て個人年金を考えている方にはあてはまりません。

税金については、平成28年1月1日以後に発行される割引債の償還差益については、税率15.315%(他に地方税5%)の源泉徴収の上、公社債の譲渡所得等に係る収入金額とみなして、税率15%(他に地方税5%)の申告分離課税の対象となります。なお、「源泉徴収ありの特定口座」を利用している場合には、税額は源泉徴収されるため確定申告を行う必要はありません。

年金管理費用
年金管理費用とは、年金として受け取ったときに年金額に対して控除される費用になります。
たとえば、メットライフのレグルスⅣでは、毎年の年金受取時に年金を管理するための費用とし年金額の1%が控除されるとなっています。また、費用の割合は将来変更されるとなっているため確定ではありません。

まとめ

外貨建て個人年金は、日本円を外国の通貨に換算し、その国の国債などで運用する個人年金になります。そのため、入金や出金時には為替の影響を受けることになります。預け入れた時点よりも償還時に為替が円安になっていれば増えることになりますが、円高になっていれば目減りをします。そのため、いくら利回りがよくても日本円で受取る際にその分が帳消しになってしまうこともあります。

 

その他のデメリットとしては、為替手数料が発生する、保険関係費用、年金管理費用、解約控除費用などの各種諸費用が取られる点があります。

 

メリットとしては、日本の年金商品よりも高利回りな点、積立利率が最低保証されている、海外でのロングステイを希望されている方は、外貨で受け取ることで為替リスクがなくなります、円安により物価高となっても為替差益によりリスクヘッジができる点などがあります。

 

以上、「外貨建て個人年金に加入する前に知っておきたいメリットとデメリット」でした。

 

該当カテゴリー:生命保険
関連カテゴリー:健康保険労災保険自動車保険