健康保険と国民健康保険どこが違う?

健康保険と国民健康保険の違い。保険料だけでなく、他にもどういう点に違いがあるのか。その違いについて詳しく解説します。

 

2017/09/29 11:49:29

健康保険は、会社勤めの方が加入する医療保険です。中小企業等で働く従業員やその家族の方が加入する協会けんぽや大手企業、あるいはグループ企業などが自主的に運営している健康保険組合等があります。保険料については、従業員と会社(事業主)が折半しています。

 

一方の国民健康保険は自営業の方や健康保険・船員保険・共済組合等に加入していない一般の方々が加入する医療保険です。市区町村が保険者となり運営を行っていて、当然ながら保険料は全額自己負担となっています。

 

国民健康保険組合とは?

国民健康保険と似ている名称に「国民健康保険組合」という医療保険があります。どちらも国民健康保険法をもとに運営している点は同じですが、国民健康保険組合は、社団法人や公法人などの組織が保険者となり運営している医療保険団体です。

 

厚生労働白書・平成25年度の統計によりますと全国で約312万人が加入しています。

 

国民健康保険組合の組織について

国民健康保険組合は以下のような組合が登録されています。

 

  • 一般社団法人日本建設組合連合
  • 公法人東京芸能人国民健康保険組合
  • 公法人東京都医師国民健康保険組合
  • 公法人東京美容国民健康保険組合団体

上記団体を含めて全国に100以上の団体があります。

 

健康保険の種類についてはこちらを参照ください。

 

次項目から健康保険と国民健康保険の違いを具体的に解説しています。

健康保険と国民健康保険では保険料の計算方法が違う

健康保険と国民健康保険の大きな違いは、保険料になります。保険料を計算する基となる保険料率が違うという点もありますが、計算方法が大きく違っているという点があげられます。

 

健康保険の場合

健康保険に被保険者として世帯主(夫)が加入しているとします。
そこに奥さんや子どもなどの家族が被扶養者として加入しても保険料に変更はありません。人頭計算で保険料は算出しないため、加入人数は関係ありません。

 

国民健康保険ではこうなる

一方、国民健康保険では世帯主のほか、他に家族などの加入者がいる場合には、所得に対しての保険料の他に、均等割分といって人数分の保険料が必要になってきます。「均等割額×加入者数」が導入されています。

 

均等割額も住所地によって違う

均等割額も住所地によって違ってきます。

 

たとえば、2018年8月現在、東京国立市においては、均等割額:20,000円×世帯内の被保険者数とですが、大阪市では21,362円×世帯内の被保険者数となっています。(2年度ごとに変更されます)

 

※ 均等割りの負担分の他に、所得によって導き出される所得割分、後期高齢者支援分、介護保険料負担分(40歳以上の方のみ)の合計が国民健康保険税(料)になります。

 

国民健康保険には事業主負担がない

健康保険料は、大きく分けると、医療保険分と介護保険分(40歳以上の場合)を合計したものが保険料になっています。そのどちらも半分は事業主が負担しています。ところが国民健康保険では当然ながら事業主負担はありません。これにより保険料の差は大きくなっています。

 

たとえば、トヨタ自動車健康保険組合の保険料と東京国立市の国民健康保険料を同条件で比較してみますと、以下のような結果になります。

 

トヨタ自動車健康保険組合の保険料と東京国立市の国民健康保険料の比較

平成26年度の料率を用いて、以下の条件としています。

 

世帯主税込み年収:700万円、妻は専業主婦で収入0円
家族構成と年齢:世帯主40歳、妻40歳、子ども中学生1人

 

ご夫婦とも40歳以上になりますから二人分の介護保険料負担があります。

 

東京・国立市にお住まいで国民健康保険に加入している場合

1ヶ月あたり35,651円、年間427,815円です。

 

〈内訳〉

  • 医療分274,920円
  • 後期高齢者支援分80,040円
  • 介護保険料分72,855円

合計427,815円(年間)

 

トヨタ自動車健康保険組合(標準報酬月額58万円で計算)

保険料は、月額20,886円、年間250,632円です。

 

〈内訳〉

  • 医療分17,700円
  • 介護分3,186円

合計:20,886円(月額)、年間、250,632円

 

以上の結果となりました。国立市は国民健康保険料の負担が少ない市区町村の部類に入りますので、もっと高い市区町村とではさらに差が生じてきます。

 

 

育児休業期間中の保険料免除

健康保険は、産前の42日と産後56日のうち、業務に就かなかった期間と育児休業期間中は保険料(介護保険料含む)が免除されます。詳細はこちらをご覧ください。

 

国民健康保険にはこのような免除制度はありません。

 

健康保険には傷病手当金がある

健康保険では業務以外の病気やケガで4日以上仕事を休むと傷病手当金が支給されます。お給料(標準報酬日額)の2/3の金額が1年6ヶ月支給されます。こちらは法律で決まっているので法定給付といいます。さらに健康保険の中でも健康保険組合によっては独自に付加給付というのを用意しており、標準報酬日額の約13%の付加給付金を受取れる組合もあります。

 

一方の国民健康保険では、法定給付さえもありませんので、病気でもケガで休んでも何も支給されません。ですからその分、何らかしらの手立てを講じておく必要があります

国民健康保険には出産手当金がない

出産のために支払われる出産育児一時金は、健康保険でも国民健康保険でも同じ制度で受取れる金額は同じです。ですが、健康保険では、継続して1年以上の被保険者期間があれば、出産のため仕事を休むと、出産手当金という休業保障があります。

 

出産の日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目、つまり42日+56日=98日を対象として出産手当金が支給されます。

 

国民健康保険には出産手当金はありません。

 

高額療養費の区分基準が違う

健康保険、国民健康保険でも、高額療養費の自己負担額の計算方法は下記の表のようにどちらも同じですが、区分の基準の用い方が違っています。

 

健康保険では、標準報酬月額を基に計算しますが、国民健康保険では、総所得金額等を用います。総所得金額等とは、収入から必要経費(給与所得控除や公的年金控除等)を引いたもので、そこからさらに33万円を差し引いた金額のことをいいます。

 

つまりは同じ年収であっても、国民健康保険は必要経費によってはランクが下がり、自己負担限度額は少なくなる場合があります。

 

健康保険(標準報酬月額) 国民健康保険(総所得金額等) 自己負担限度額3回めまで 4回目以降
83万円以上 901万円超 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 140,100円
53万~79万円の方 600超~901万円以下 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
28万~50万円の方 210超~600万円以下 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
月額26万円以下の方 210万円以下 57,600円 44,400円
被保険者が市町村税の非課税者等 住民税非課税世帯 35,400円 24,600円

健康保険組合には付加給付がある

上記のとおり法定給付である高額療養費は同じですが、健康保険組合によっては、別途、独自に付加給付を設けているところもあります。付加給付というのは、さらに自己負担分を補ってくれる制度です。

 

この付加給付は、各健康保険組合によって金額は違っています。また、導入されていないところもあります。

 

例えばトヨタ自動車健康保険組合の付加給付においては、「医療費自己負担額-2万円」となっています。NTT健康保険組合では、「医療費自己負担額-25,000円」で計算し超過分を還付するとなっています。

 

つまりは医療費については1ヶ月あたりそれ以上の自己負担はないということになります。この点、国民健康保険にはありませんのでこの点も違っています。

 

トヨタ自動車健康保険組合のホームページはこちら

 

国民健康保険には保険料の軽減制度がある

健康保険には保険料軽減制度はありませんが、国民健康保険には、前年中の所得が低かった世帯を対象に、国民健康保険税の一部である被保険者均等割額や平等割額を減額する制度があります。

 

また、倒産・解雇などにより離職(特定受給資格者)された方や雇い止めなどにより離職(特定理由離職者)された方にも軽減制度があります。

 

介護保険料に違いがある

第2号被保険者(40歳以上64歳まで)ともなりますと、健康(医療)保険料の他に介護保険料も納付義務が生じてきます。国民健康保険では、各市区町村で定めた所得割の料率(%)や均等割という40歳から64歳までの加入者の人数によって保険料は算出されます。

 

そのため夫婦とも年齢が40歳上64歳の間ならば2人分の介護保険料を納めることになります。

 

一方、健康保険では標準報酬月額に対しての料率のみになります。そのため、たとえ同じ年収であっても国民健康保険と健康保険では保険料に違いが出ます。

まとめ

健康保険の制度についてまとめると以下の項目になります。

 

  • 加入人数に対しての保険料負担は不要(均等割額がないため)
  • 保険料の半分は事業主が負担してくれる
  • 被保険者が出産して休業する場合には健康保険料(介護保険料含む)や厚生年金が免除になる
  • 業務以外の病気やケガで4日以上仕事を休むと傷病手当金が支給される
  • 出産のため仕事を休むと出産手当金という休業保障制度がある
  • 高額療養費の区分分けのための基準は標準報酬月額を用いる
  • 高額療養費以外の付加給付という制度を独自で導入している組合もある

 

国民健康保険のまとめ

  • 均等割額という加入人数に対しての負担が必要
  • 保険料は全額自己負担
  • 出産のための休業では保険料免除はない
  • 出産手当金という制度はない
  • 高額療養費の区分分けのための基準は総所得金額を用いる
  • 高額療養費以外の付加給付という制度はない
  • 前年中の所得が低かった世帯を対象に保険料を減額する制度がある

 

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〈国民健康保険の加入する際に必要な書類とは〉
健康保険の被保険者が会社を退職して、国民健康保険に加入する場合には、退職日の翌日から14日以内に住民票のある役所で手続きを行う必要があります。

 

その際に、必ず必要になるのが「健康保険資格喪失証明書」です。詳しく知りたい方は、こちらの健康保険資格喪失証明書とは?どこで発行してくれるの?をご覧ください。

 

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