75歳以上や65歳以上で寝たきり等の方は、健康保険組合や国民健康保険等から後期高齢者医療制度の医療保険に移行します。それに伴い、高額療養費の計算も違ってきます。その後期高齢者の高額療養費についての計算方法について解説します。

このページのタイトルで「高額医療費」とうたっていますが、正式名称は高額療養費です。

 

2016/05/18 17:42:18

高額療養費の計算はどうやるの?

後期高齢者医療制度に加入している方(被保険者)の医療費が高額になったときには、申請により払い戻すことができます。

 

払い戻すことができる金額は自己負担限度額を超えた分です。
それでは、この自己負担限度額とはいったいいくらの金額をいうのでしょうか。

 

後期高齢者医療制度の自己負担限度額は、所得で異なっており、以下のとおり4区分されています。下記表は、平成29年8月1日診療分からのものです。

 

区分

自己負担限度額

個人ごと(外来)

世帯ごと(外来+入院)

多数該当(※3)

現役並み所得者 57,600円 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
一般 14,000円(年間144,000円が上限) 57,600円 44,400円
低所得Ⅱ(※1) 8,000円 24,600円 なし
低所得Ⅰ(※2) 8,000円 15,000円 なし

 

※1低所得者Ⅱとは:世帯の全員が市町村民税非課税の被保険者(低所得者Ⅰ以外の被保険者)

 

※2低所得者Ⅰとは:世帯の全員が市町村民税非課税で、その世帯の各所得が必要経費を差し引いたとき0円となる被保険者(年金の場合は年金収入80万円以下)

 

※3多数該当とは:過去12か月に3回以上の高額医療費の支給を受けている場合をいい、4回目以降の支給に該当する場合の自己負担限度額です。外来のみの支給は回数に含みません。

高額長期疾病(特定疾病:慢性腎不全・血友病・後天性免疫不全症候群)については、現役並み所得者と一般との区分に関係なく、外来・入院ごとに自己負担限度額が10,000円となります。

 

高額療養費の計算手順

同じ世帯内で後期高齢者医療制度に加入している方の医療費が計算の対象となります。
また、同じ月の初日から末日までの1カ月の受診した医療費が計算対象になります。

 

食事療養標準負担額や差額ベッド代などは医療費に含めることができません。

 

外来分から計算します

各個人で支払った医療費を下記表に該当する外来の限度額に適用し、外来分の受取れる額を計算します。

 

後期高齢者医療対象者全員の支払った一部負担金を合算します

次に、世帯内の後期高齢者医療対象者全員の支払った一部負担金を合算し、世帯の限度額を超えた分の高額療養費の計算をします。※上記の個人への支給がある場合は、その支給額分は合算しません。

 

1、2を合計します

1と2で計算した合計額が高額療養(医療)費として後から払い戻されます。

 

この説明だけでは、わかりずらいと思いいまので事例をご覧ください。

平成29年8月以降の後期高齢者医療制度の高額療養費、計算事例

負担区分が一般に該当するAさんが、同月に通院外来の医療費がA病院1万円とB歯科医院1万円の合計2万円、そして入院医療費を4万円を支払った場合です。後期高齢者医療に該当するのは家族でAさん一人だけで多回数には該当しないとする。

 

まず、通院の計算をします。
2万円から、「一般個人の限度額(外来のみ)」の自己負担限度額(月額)14,000円を引きます。

 

20,000円-14,000円=6,000円・・・・①

 

次に、通院外来で支払った2万円から高額療養費の6,000円を差引いた14,000円と入院で支払った40,000円を合計します。

 

14,000+40,000円=54,000円。
この54,000円から限度額である57,600円を引きますが、引けませんので0円になります。・・・②

 

よって、①+②の合計で6,000円+0円=6,000円高額療養(医療)費です。

 

平成29年7月31日の診療分までの一般に該当される方の自己負担限度額(月額)は、通院12,000円(個人)、外来+入院(世帯合算)44,400円でしたので、8月診療分から自己負担額が大きく増えています。ちなみに上記のケースですと、15,600円が高額療養費でした。

 

※ もしも、AさんがB歯科の外来通院がなく、A病院だけの通院外来だけでしたら、自己負担額1万円なので外来限度額である14,000円を超えません。そのため外来通院に関しては支給されません。

 

よって10,000円(外来分)+40,000円(入院分)=50,000円。
50,000円-57,600円(世帯限度額)=0円となり、高額療養(医療)費の支給はありません。

 

こちらのケースでも7月までの制度なら5,600円が高額療養費から支給されました。

 

 

平成29年8月以降の後期高齢者の高額療養費の計算事例2

後期高齢者医療に該当(被保険者)するのがAさんと奥さんの2人の場合。

 

負担区分が一般のAさんが、同月に通院外来の医療費がA病院1万円とB歯科医院1万円の合計2万円、他に入院医療費で4万円支払い。奥さんは通院外来で医療費として1万円を支払った場合。

 

まずは、Aさんの通院外来分から計算します。
外来医療費は、20,000円-14,000円=6,000円・・・①

 

次に奥さんの外来医療費計算します。
奥さんの外来医療費は1万円で自己負担限度額14,000円を超えていないため、高額療養費は支給されません。

 

次に世帯の限度額(外来+入院)の計算は、Aさんの通院自己負担額14,000円と奥さんの通院10,000円、それに入院の40,000円をたします。

 

14,000円+10,000円+40,000円=64,000円

 

64,000円-57,600(世帯ごと外来+入院の限度額)=6,400円・・・②

 

よって高額療養費=①+②=6,000円+6,400円=12,400円

 

平成29年7月31日の診療分までの一般に該当される方の自己負担限度額(月額)は、通院12,000円(個人)、外来+入院(世帯合算)44,400円でしたので、自己負担額が大きく増えています。
ちなみに上記のケースですと、25,600円が高額療養費から支給されました。

高額療養費(医療費)の計算にあたっての注意事項

先ほども書きましたが、高額療養(医療)費の計算基準は1日から末日までの月単位の支払った医療費になります。しかし以下のものは含めることはできません。

 

  • 健康保険適用外の自由診療費用
  • 入院時の食事代
  • 差額ベッド代

 

医療費に含めることができるもの

以下の負担金は医療費に含めることができます。

 

  • 医科
  • 歯科
  • 調剤薬局
  • 訪問看護療養費
  • 柔道整復師の施術
  • はり師・きゅう師の施術、あん摩・マッサージ・指圧師
  • コルセット等の治療用装具

 

高額療養(医療)費の手続きはどうすればいいの?

高額療養(医療)費の申請は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療窓口が担当になりますので、そちらに申請します。

 

申請に必要な書類はどういうもの?

 

  • 高額医療費支給申請書
  • 被保険者証(保険証)
  • 印かん
  • 口座番号・口座名義人の確認ができるもの
  • 本人確認ができる身元確認書類(運転免許証、パスポート、個人番号カード等)
  • マイナンバー(個人番号)が確認できる書類(通知カード、個人番号カード等)
  • 委任状(代理人が申請や受領をする場合のみ)

 

詳しくは、お住いの市区町村の後期高齢者医療窓口にお尋ねください。

まとめ

高額療養(医療)費は、自己負担限度額を超えた分が申請によりあとから払い戻されるものです。

 

計算としては、「1日から末日までの1ヶ月単位の医療費」で計算しますが、高額療養(医療)費には、差額ベッド代や入院時の食事代は含めることができません。

 

手続きにおいてはお住まいの市町村にある後期高齢者医療の窓口へ以下のものを提出します。

  • 高額医療費支給申請書
  • 被保険者証(保険証)
  • 印かん
  • 口座番号・口座名義人の確認ができるもの
  • 本人確認ができる身元確認書類(運転免許証、パスポート、個人番号カード等)
  • マイナンバー(個人番号)が確認できる書類(通知カード、個人番号カード等)
  • 委任状(代理人が申請や受領をする場合のみ)

 

以上、「後期高齢者の高額医療(療養)費、どのように計算するの?」でした。
〈関連ページ〉
後期高齢者の保険料をわかりやすく解説

 

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