健康保険の給付と自己負担と海外療養費について

健康保険の給付と自己負担について

このページでは、病気やけがで通院や入院したときの健康保険からの現物給付や出産育児一時金等の現金で支給される現金給付について、医療費の自己負担割合や入院食事費、海外療養費等について解説しています。

 

健康保険の給付について

健康保険から受けることができる給付は大別すると2つあります。
ひとつは現物給付。もうひとつは現金給付です。

 

現物給付とは次のものをいいます。

 

現物給付とはなに?

  • 診察
  • 薬剤または治療材料の支給
  • 処置、手術その他の治療
  • 在宅療養・看護
  • 入院・看護

これらは、病院に健康保険証を提示することによって、一定割合の自己負担で診察や治療を受けたり、薬をもらうことができます。
このように医療行為そのものを提供するので「現物給付」と呼んでいます。

 

現金給付とは?

健康保険の現金給付とは次のものをいいます。

 

  • 傷病手当金
  • 出産育児一時金
  • 出産手当金
  • 埋葬料(費)
  • 移送費
  • 高額療養費
  • 療養費
  • 合算高額療養費

 

これらは、直接現金で給付を行いますので「現金給付」といっています。

 

※出産育児一時金と高額療養費は「現物給付」もあります。

 

健康保険のサービスには、現物給付と現金給付という二つの給付があるということをご理解いただけたかと思います。

健康保険の自己負担割合について

このページは健康保険の自己負担について解説したページです。
健康保険では、年齢によって保険からの給付割合が統一されていますので、おのずと自己負担も決まっています。

 

外来・入院の自己負担

外来と入院の自己負担を見てみましょう。
70歳から74歳までの方は、自己負担割合が3つに分かれているところがポイントです。

 

年齢区分 被保険者負担割合 給付割合
義務教育就学前 2割 8割
義務教育就学から69歳まで 3割 7割
70~74歳、現役並み所得者(※1) 3割 7割
70~74歳(昭和19年4月1日までに生まれた方(昭和19年4月1日までに生まれた方、現役並み所得者(※1)以外の方 1割 9割
70歳から74歳(昭和19年4月2日以降に生まれた方)までの方で、現役並み所得者(※1)以外の方 2割 8割

 

※70歳以上74歳までについて:平成26年3月31日以前に70歳に達している人(昭和14年4月2日~昭和19年4月1日生まれ)は引き続き1割負担となります。
また、70歳以上で現役並みの所得者の給付は7割りとなりますので自己負担は3割となります。

 

現役並み所得者の判定について

健康保険加入者で70歳~75歳未満の現役並み所得者の判定は複雑です。下記の図をご覧ください。

 

70歳から75歳未満の現役並み所得判定

 

※ 注1:平成26年3月31日以前に70歳に達している人(昭和14年4月2日~昭和19年4月1日生まれ)は引き続き1割負担となります。

 

※ 被保険者(健康保険に加入しいてる人)が70歳未満の場合は、その被扶養者(家族)である高齢受給者は、現役並み所得者とはなりません。

健康保険の入院食事代について

標準的な食事代は、1日3食で1,920円、1食640円を限度に設定されています。この費用が、実際にかかっている食事代です。

 

しかしながら、自己負担額は、1日3食780円、1食につき260円です。これを食事療養標準負担額といいます。

 

そのため、実際に掛かっている食事代との差額は健康保険が負担(現物給付)しています。

 

区分

食事療養標準負担額

  1食 1日3食
一般 260円 780円
市町村民税非課税者 210円 630円
低所得2* 210円 630円
長期入院の場合(91日目以降) 160円 480円
低所得1* 100円 300円

 

※ 低所得2:70歳以上の者で世帯全員が市町村民税非課税の人等
※ 低所得1:70歳以上の者で世帯全員が市町村民税非課税で所得が一定基準(年金収入80万円以下等)を満たす人等

健康保険証がなくて全額立替払いをしたとき

出先や旅先で健康保険証を持っていないくて急病になったときなど、保険証を提出せずに医療機関で治療を受けた場合には、医療費を全額自己負担しなければなりません。
また、治療のために装具が必要になったときなどは、かかった医療費の全額を一時立替払いをします。

 

このような場合には、加入先の健保組合や協会けんぽに申請をすれば、立て替えた保険診療分の金額については払い戻しを受けることができます。

 

立て替え払いに対して行われる給付のことを「療養費」といいます。

 

健康保険の立て替え払いについてQ&A

 

支払ったお金は全額戻りますか?

いいえ。保険医療機関で保険診療を受けた場合を基準に計算した額(実際に支払った額が保険診療基準の額より少ないときは、実際に支払った額)から一部負担金相当額を差し引いた額が払い戻されます。
ですから、もしあなたの自己負担が3割負担でしたら7割が戻るということになります。
ただし、健康保険で認められない費用などは除外されます。

 

療養費は、どんなケースが考えられますか?
  1. 資格取得届の手続き中で保険証を提示できず、自費で診療を受けたとき
  2. 海外の医療機関で診療を受けたとき
  3. 柔道整復師(整骨院・接骨院)から施術を受けたとき
  4. コルセットなどの治療用装具を医師の指示で作成し、装着したとき
  5. 生血液の輸血を受けたとき
  6. はり・きゅう・マッサージの治療を医師の同意を得て受けたとき
  7. 9歳未満の小児が小児弱視等の治療で眼鏡・コンタクトレンズを作成・購入したとき
  8. 四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等を購入したとき

 

立替払いの注意点
健康保険の給付を受ける権利は、2年で時効となりますからご注意ください。

健康保険が使えない場合とは

健康保険が使えないということは、全額自己負担して治療をするということになります。
では、どんなものが使えないのか明記したのが下の表になります。

 

表の左側は、健康保険が使えない場合、表の右側は、「例外」です。

 

健康保険が使えない

  例外的に使える場合
仕事や日常生活にさしさわりのないソバカス、アザ、ニキビ、ホクロ、わきがなど 治療を必要とする症状があるもの
回復の見込みがない近視、遠視、乱視、斜視、色盲など 視力に変調があって保険医にみてもらったときの診察、検査、眼鏡の処方せん
美容のための整形手術 けがの処置のための整形手術
健康診断、生活習慣病検査、人間ドック 診察の結果、治療が必要と認められた場合の治療
予防注射、予防内服 傷口から感染している可能性がある場合の破傷風の予防注射
身体の機能にさしさわりのない先天性疾患(小耳症、四肢奇形など) 美容のためでなく、社会通念上治療の必要があると認められるもの
正常な妊娠・出産 妊娠高血圧症候群、異常出産など、治療する必要があるもの
経済的理由による人工妊娠中絶 経済的理由による場合以外の母体保護法に基づく人工妊娠中絶
業務上の病気やケガ 例外なし、仕事が原因となって起きた病気やケガ、障害又は死亡を業務災害といい、労災保険から給付されます。
通勤途上の病気やケガ 例外なし、通勤途上の病気やケガ、障害又は死亡は通勤災害といい、労災保険から給付されます。

健康保険加入者が海外で病気やケガをしたら

健康保険では、国内でかかった病気やケガだけを補償しているのではありません。
やむを得ず、海外旅行中や海外赴任中に急な病気やけがなどにより現地の医療機関で診療等を受けた場合は、一旦は全額自己負担する必要がありますが、帰国後に加入されている健康保険へ申請して一部医療費の払い戻しを受けることができます。

 

この制度を「海外療養費制度」といいます。

 

健康保険の海外療養費制度Q&A

 

どういう計算で健康保険から支給されるの?

海外で行った治療を日本で行った場合にかかる治療費に換算し、その額から自己負担相当額(原則3割)を差し引いた金額が支給されます。
もし、実際に海外で支払った額の方が低いときはその額から自己負担相当額を差し引いた金額になります。

 

どのような治療でも支給対象になりますか?

日本国内で保険適用となっていない治療は支給対象になりません。

 

 

健康保険への請求には、どのような書類が必要ですか?

診療内容明細書と領収明細書が必要になります。「協会けんぽ」ではパスポートの写しも必要になります。

 

治療目的で海外に行った場合でも支給対象になりますか?

治療目的で海外に出向いた場合は支給の対象になりません。また、美容整形や歯科矯正の治療の場合も支給の対象になりません。

 

 

民間保険会社の旅行傷害保険に加入していても支給対象になりますか?

その場合でも海外療養費の支給対象になります。

 

 

海外療養費の請求に時効はありませんか?

請求できるのは、海外で医療費を支払った日の翌日から起算して2年間になります。

 

まとめ

健康保険の給付には、現物給付と現金給付があります。

 

現物給付とは以下のものになります。

  • 診察
  • 薬剤または治療材料の支給
  • 処置、手術その他の治療
  • 在宅療養・看護
  • 入院・看護

 

現金給付とは、保険者から直接現金で支払われるもので、以下のものをいいます。

  • 傷病手当金
  • 出産育児一時金
  • 出産手当金
  • 埋葬料(費)
  • 移送費
  • 高額療養費
  • 療養費
  • 合算高額療養費

 

健康保険の自己負担について
健康保険の自己負担割合については、0歳から69歳までは2割、もしくは3割の負担となっていますが、70歳から74歳までは基本は2割負担となっていますが、昭和14年4月2日~昭和19年4月1日生まれ)は引き続き1割負担となっています。

 

海外療養費制度について
健康保険には、海外療養費制度があり、海外旅行中や海外赴任中に急な病気やけがなどにより現地の医療機関で診療等を受けた場合は、一旦は全額自己負担する必要がありますが、帰国後に加入されている健康保険へ申請して一部医療費の払い戻しを受けることができます。

 

以上、「健康保険の給付と自己負担と海外療養費について」の解説でした。

 

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