定年後に引続き働くとなると雇用保険や厚生年金にも加入することになります。しかし働き過ぎると年金が減額されます。そこで、どういった働き方がいいのか解説してみましたのでご覧ください。

60歳の関連ページ:60歳代に突入して生命保険のことが気になる方は、「60歳からの生命保険はどういう保険を選択すればいいの?」をご覧ください。

 

2015/10/07 19:41:07

年金支給停止や減額とは?

 

退職後の再雇用での働き方によって老齢厚生年金の年金支給停止があります。また雇用保険の加入にも関係してくるのでご紹介します。

年金支給開始年齢の引上げの影響等もあり、定年後も65歳まで働くケースは多いと思いますが、働き方によっていろいろと変わってくるものがあります。

それは、年金の減額、雇用保険への加入、厚生年金への加入、継続雇用給付金の支給等々です。仕組みが複雑なためにわかりずらいのですが、どのように働くかによってだいぶ違ってきますので、十分に検討することが必要です。

退職後の働き方を検証

働くにあたって、選択肢は3つあります。以下は「正社員の方が1日7.5時間働き、週5日勤務の会社」で働く場合を想定としています。

働き方1:1日4時間、週に2日勤務という場合
このケースの場合は、「週の勤務時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込があること」という雇用保険の加入要件には該当しませんので加入できません。

次に厚生年金も、「1日または週の勤務時間がともにおおむね正社員の4分の3以上であること」という加入要件に該当しないため加入できません。

収入=厚生年金の被保険者に該当しないため、給与・特別支給の老齢厚生年金とも満額受け取れます

働き方2:1日5時間、週に4日勤務という場合
このケースの場合は、「週の勤務時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込があること」という雇用保険の加入要件に該当しますので雇用保険は加入となります。

次に厚生年金は、「1日または週の勤務時間がともにおおむね正社員の4分の3以上であること」という加入要件に該当しないため加入できません。

収入=厚生年金の被保険者に該当しないため、給与・特別支給の老齢厚生年金とも満額受け取れます。ほかに、雇用保険に加入しているため、要件をみたした場合は高年齢雇用継続給付金を受け取れます。

働き方3:正社員と同じように1日に7.5時間、週に5日勤務という場合
このケースの場合は、雇用保険、厚生年金とも加入要件を満たしているため、両方とも加入することになります。


収入=厚生年金の加入者となるため、年金額が減額される場合があります。一方、雇用保険に加入しているため、要件をみたした場合は高年齢雇用継続給付金を受け取れることができますが、こちらを受け取る場合も特別支給の老齢厚生年金の一部、もしくは全額が支給停止になる場合もあります。

特別支給の老齢厚生年金って?

老齢厚生年金''は65歳からの支給となっています。
ただし、男性では1961年(昭和36年)4月1日以前の生まれ、女性は1965年(昭和40年)4月1日以前の生まれの方においては経過措置として、条件に合致すれば特別支給として老齢厚生年金の支給があります。このことを特別支給といっています。ただし、生まれ年によって段階的に支給開始年齢は引き上げられています。

支給条件

  • 60歳以上の年齢であること
  • 厚生年金の被保険者期間が1年以上あること
  • 国民年金の基礎年金を受け取るための資格期間(25年)があること

在職老齢厚生年金制度と支給停止について

厚生年金に加入して、60歳以降も働きながら年金を受け取る場合には、給与と老齢厚生年金額の合計が一定額を超えると、老齢厚生年金の一部、または全額が支給停止されることになります。この制度を在職老齢年金制度と言います。

年金の支給停止額の計算については、65歳未満と65歳以上で異なっていますよ。

65歳未満の年金の支給停止額の計算

65歳未満では、以下のようになっています。

基本月額 + 総報酬月額相当額 を合算して28万円を超えるときに年金額の一部減額もしくは全額停止になります。
  • 基本月額とは、老齢厚生年金額(加給年金のぞく)÷12か月
  • 総報酬月額相当額とは、厚生年金被保険者の標準報酬月額+(その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12か月)

計算式は非常に複雑なので表にしています。

60歳から65歳未満の場合の特別支給の老齢厚生年金支給停止額


基本月額+総報酬月額相当額 総報酬月額相当額 支給停止額(年額)
28万円以下   なし(全額支給)
28万円超 a 基本月額 28万円以下 46万円以下 (基本月額+総報酬月額相当額-28万円)×1/2 ×12
46万円超 {(46万円+基本月額-28万円)×1/2+(総報酬月額相当額-46万円}×12
b 基本月額 28万円超 46万円以下 総報酬月額相当額×1/2×12
46万円超 [46万円×1/2+(総報酬月額相当額-46万円)]×12

実際に年金額はどうなるのか

事例を取り上げています。
例1
給与が20万円で年金が月額16万円の場合、4万円支給減額停止になり、年金は12万円の支給になります。合計32万円
例2
給与が25万円で年金が月額20万円の場合、8.5万円支給減額停止となり11.5万円の支給になります。合計36.5万円
例3
給与が30万円で年金が月額20万円の場合、11万円支給減額停止となり9万円の支給になります。合計39万円
例4
給与が15万円で年金が月額12万円の場合、年金の減額はなく、満額受け取ることができます。合計27万円

まとめ

働き方によって、老齢厚生年金が満額支給されたり、あるいは減額もあります。また雇用保険や厚生年金に加入することもあります。その点をどうするかは、人それぞれ、健康状態、資産、家庭(家計)の事情、趣味への想いなどが異なると思いますので、自分はどのような働き方を選択するのかベストなのか、もしくは、60歳以降どのような生活をしていきたいのかを前もって考えておくべきだといえます。