厚生労働省の資料(平成23年度全国母子世帯等調査の概要)によりますと、母子家庭となった理由は、推計値123.8万世帯の母子家庭は離婚が80.8%、死別が7.5%となっています。父子家庭の場合は、離婚が74.3%、死別が16.8%です。ひとり親家庭(母子家庭・父子家庭)となった理由は、離婚ばかりでなく、意外にも死別が多いのです。

 

ところで、それまで夫婦お互いの収入で生活が成り立っていた場合には、ひとり親家庭、とくに母子家庭ともなると収入減少により資金面で苦労することが多くなります。

 

そういった際の資金調達手段として「母子・父子寡婦福祉資金」という貸付制度があります。もちろんこの制度は、貸付金になるので返済する義務がありますが、こどもの教育費のためなら金利は無利子となっています。
実際には、数日で貸付が受けられるわけではありませんが、奨学金や生活費のために高金利の高いキャッシングなどする前に検討してみてはいかがでしょうか。さらなる詳細は本文をご覧ください。

 

2016/03/29 12:10:29

母子寡婦福祉資金とは?奨学金とは違うの?

母子・父子寡婦福祉資金(ぼし・ふし・かふくふくししきん)とは、母子・父子家庭(20歳未満のこどもを扶養している方)や寡婦(配偶者のいない女性でかつて母子家庭の母であった方)に対して、こどもの教育資金や親自身が就職するための技能取得のため、あるいは住居の移転、住居の改築をするためなどについての資金を貸し付ける制度をいいます。

 

奨学金との違いとは?
国内の大学、短大、専修学校(専門課程)、高等専門などで学ぶ人で、そのための資金が不足している方を対象とした日本学生支援機構がおこなっているのが奨学金制度です。※母子家庭を対象とした奨学金制度ではありません。

 

この奨学金は、返済不要のお金ではなく、貸与になりますから返済の義務があります。
利息については、第一種奨学金という無利息のものと、利息付きの第二種奨学金がありますが、平成27年3月末現在の利息は、利率固定方式では年0.63%、利率見直し方式では年0.10%となっています。

 

母子・父子寡婦福祉資金の貸付金は、こどもの教育資金であれば無利子となっていますから、利息については第一種奨学金と同じといえます。

 

しかしながら、第一種奨学金の選考基準は、「特に優れた学生及び生徒で経済的理由により著しく修学困難な人に貸与します。」となっていますから誰でもが第一種奨学金で借りられるわけではありません。

 

そこで、利息付きの第二種奨学金と無利息の母子・父子寡婦福祉資金での返済総額の違いを比較してみました。

 

たとえば、固定金利年0.63%、奨学金月額10万円(総額480万円)を借りた場合に返済回数は20年(240回)となり、月額25,624円の返済額、総額で5,124,730円になります。

 

一方の母子・父子寡婦福祉資金では、無利子ですから、返済総額は480万円です。奨学金に比べれば約32万円も少なくてすみます。

 

貸付金額の違い

日本学生支援機構においての大学のための奨学金は月額30,000円、50,000円、80,000円、100,000円または120,000円となっています。

 

母子・父子寡婦福祉資金は、以下の表のようになっています。※自治体によって内容や金額が異なっています。

 

月額 自宅 自宅外
公立大学 45,000円 51,000円
私立大学 54,000円 64,000円

 

返済回数の違いについて

奨学金の返還回数(年) は、貸与総額に応じて異なっていますが、母子・父子寡婦福祉資金
の返済(償還期間)については金額にかかわらず20年以内となっています。(専修学校の一般課程は5年以内)

 

 

滞納した場合について

奨学金、母子・父子寡婦福祉資金のどちらにおいても、延滞元利金額につき年五パーセントの割合をもって、支払期日の翌日から支払当日までの日数により計算した違約金が徴収されます。

 

母子・父子寡婦福祉資金の主な特長

母子・父子寡婦福祉資金には主に以下の特長があります。

 

  • 都道府県、指定都市又は中核市が貸付を行っている
  • 貸付する前に区や市役所等のや子ども家庭部子育て支援課、保健福祉事務所などに相談が必要
  • 申請をしてから資金が交付されるまでに通常1か月以上かかる
  • 資金の種類により、3年間から20年間までの償還(返済)期限がある
  • 貸付金の種類によっては無利子になっている
  • 貸付金利1.5%のものでも連帯保証人をつけることで無利子になる(市によってはすべて無利子のところもある)
  • 貸付金の種類は12種類ある:事業開始資金、事業継続資金、修学資金、技能習得資金、修業資金、就職支度資金、医療介護資金、生活資金、住宅資金、転宅資金、就学支度資金、結婚資金

 

どのような人が貸付申請できるの?

貸付申請ができるのは、以下のいずれかに該当する方々です。
※児童とはここでは20歳未満をいいます。
※都道府県、指定都市又は中核市によって異りますので、お住まいの市等にご確認ください。

 

  • 母子家庭の母(配偶者のない女子で、現に児童を扶養している方)
  • 母子家庭の母が扶養している児童(20歳未満)
  • 父母のいない児童(20歳未満)

 

 

  • 父子家庭の父(配偶者のない男子で、現に児童を扶養しているもの)
  • 父子家庭の父が扶養している児童(20歳未満)

 

  • 寡婦(配偶者のない女子で、かつて母子家庭の母であったもの)
  • 寡婦が扶養している子(20歳以上)
  • 40歳以上の配偶者のない女子であって、母子家庭の母及び寡婦以外のもの

※ 寡婦の場合で現在扶養する子がいない場合は所得制限があります。

いくら借りられるの?

母子・父子寡婦福祉資金の貸付金額は、都道府県、指定都市又は中核市によって異なっています。以下は平成27年度の東京都の貸付金です。

 

①事業開始資金:283万円、母子家庭の母、または父子家庭の父等との共同事業の場合426万円。事業を開始するために必要な設備や什器(じゅうき)、機械等の購入資金

 

②事業継続資金:142万円、事業継続のための運転資金

 

③技能取得資金:月額68,000円、自動車運転免許を取得の場合46万円、親本人が、就職するため、または事業を開始するための知識技能を取得するための授業料や入学金などの資金

 

④修業資金:月額68,000円、自動車運転免許を取得の場合46万円、児童又は子が、就職するため、または事業を開始するための知識技能を取得するための授業料や入学金などの資金

 

⑤5就職支度資金:10万円、通勤のための自動車を購入する場合32万円、就職するために必要な服や履物を購入するために資金

 

⑥医療介護資金:医療分34万円(所得税非課税世帯は48万円)、介護分は50万円、医療分は医療を受けるための資金、介護資金は親(父または母)が介護保険でサービスを受けるための資金(介護を受ける期間が1年以内と見込まれる場合)。

 

⑦生活資金:生活資金は4区分されています。

  1. 技能取得期間中:月額141,000円、技能取得期間中の生活資金のため。
  2. 医療介護期間中:月額103,000円(生活中心者でない場合69,000円)、医療介護を受けている期間の生活資金のため。
  3. 生活安定貸付:月額103,000円、養育費取得のための裁判費用1,236,000円、母子家庭、父子家庭になって7年未満の方。
  4. 失業期間中:月額103,000円(生活中心者でない場合69,000円)、失業している期間の生活資金として。離職した翌日から1年以内の方。

 

⑧住宅資金:150万円、災害、老朽等による増改築、及び住宅建設、購入資金は200万円。

 

⑨転宅資金:26万円、住居を移転するために必要な運送費、資金、前家賃などの資金として。

 

⑩結婚資金:30万円、児童又は子供の挙式披露宴等で必要な資金として。

 

⑪修学資金:高等学校の国公立の月額18,000円から大学私立の月額64,000円(自宅外の場合)まで細分化されています。高等学校、大学又は専修学校就学中の学費等に必要な資金。詳しい金額はこちらのPDFへ

 

⑫就学支度資金:小学校、中学校、高等学校・大学等及び修業施設の入学金等、入学にあたって必要な資金。

  • 小学校は40,600円
  • 中学校は47,400円
  • 専修学校(一般課程)・公立の高校16万円
  • 私立高校・専修学校(高等課程)42万円
  • 国公立の大学・短期大学38万円
  • 私立大学・私立専修学校(専門課程)59万円

 

 

申込に必要な書類

申込に必要な書類は以下のものです。(東京都の場合)

 

  • 貸付申請書
  • 戸籍謄本(母、または父、および児童または子の戸籍がわかるもの)
  • 世帯全員の住民票の写し
  • 借受人、連帯借受人・連帯保証人の印鑑登録証明書
  • 母または父及び連帯保証人の収入をあきらかにする書類
  • 生活費収支内訳
  • 資金の種類に応じた必要な書類
  • その他借受人等の状況や申込内容に必要な書類

 

連帯保証人について

東京都においては、連帯保証人が必要な貸付資金は以下のものになります。原則、連帯保証人をつけることで無利子での貸付となります。すべての貸付において、申請時には連帯保証人が必要な市もあります。

 

事業開始資金、事業継続資金、修学資金、技能習得資金、就職支度(母または父分)、医療介護資金、生活資金、住宅資金、転宅資金、結婚資金。

まとめ

母子・父子寡婦福祉資金とは、20歳未満のこどもを扶養しているひとり親家庭や寡婦(配偶者のいない女性でかつて母子家庭の母であった方)に対して、こどもの教育資金や親自身が就職するための技能取得のため、あるいは住居の移転、住居の改築をするためなどについての資金を貸し付ける制度をいいます。

 

貸付金の種類としては、事業開始資金、事業継続資金、修学資金、技能習得資金、修業資金、就職支度資金、医療介護資金、生活資金、住宅資金、転宅資金、就学支度資金、結婚資金の12種類あります。

 

修学資金や就学支度資金、修業資金は無利子となっていますが、他の貸付は年1.5%の利子がつきます。ただし連帯保証人をつけることで無利子になります。名古屋市などはすべて無利子ですが貸付の区分に関係なく連帯保証人を立てる必要があります。

 

以上、「母子・父子寡婦福祉資金とはどのような貸付制度なの?」についてでした。