療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治らない場合に支給される労災保険の傷病補償年金。その内容とポイントについて解説します。
2015/07/14 21:12:14
労災の傷病補償年金とは
傷病補償年金とは、労働者が業務上による負傷し、療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治らず、下記の労災保険法施行規則別表第2の傷病等級表に定める傷病等級に該当し、その状態が継続しているときに支払われる年金です。
傷病年金とは、通勤による負傷により支払われる年金をいいます。
支給額について
傷病等級に応じて、以下の表のように傷病(補償)年金、一時金として傷病特別支給金、傷病特別年金が支払われます。
傷病等級 | 傷病(補償)年金 | 傷病特別支給金(一時金) | 傷病特別年金 |
---|---|---|---|
第1級 | 給付基礎日額の313日分 | 114万円 | 算定基礎日額の313日分 |
第2級 | 給付基礎日額の277日分 | 107万円 | 算定基礎日額の277日分 |
第3級 | 給付基礎日額の245日分 | 100万円 | 算定基礎日額の245日分 |
傷病特別支給金とは
傷病特別支給金とは、傷病補償年金(労働災害で支給)又は傷病年金(通勤災害で支給)の受給権者に対して支給される一時金です。
傷病特別支給金を受け取っていて、傷病が治癒し、障害が残った場合ついて
この場合は、残った障害が障害特別支給金の支給要件に該当し、すでに受け取っている傷病特別支給金を超える場合に限り、その差額が障害特別支給金として支給されます。
傷病特別年金とは
傷病特別年金とは、傷病補償年金又は傷病年金の受給権者に対して支給される年金です。
給付金額は、算定基礎日額を用います。
算定基礎日額とは
算定基礎日額とは、業務上や通勤で事故が発生した日以前1年間に事業主から支払われた3ヶ月を越える期間に支払われたボーナスなどをいい、365で割った金額をいいます。
労災保険法施行規則別表第2の傷病等級表
傷病等級 | 給付の内容 | 障害の状態 |
---|---|---|
第1級 | 当該障害の状態が継続している期間1年につき給付基礎日額の313日分 | 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し、常に介護を要するもの |
2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に介護を要するもの | ||
3. 両眼が失明しているもの | ||
4. そしゃく及び言語の機能を廃しているもの | ||
5. 両上肢をひじ関節以上で失ったもの | ||
6. 両上肢の用を全廃しているもの | ||
7. 両下肢を膝関節以上で失ったもの | ||
8. 両下肢の用を全廃しているもの | ||
9. 前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの | ||
第2級 | 同277日分 | 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し、随時介護を要するもの |
2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、随時介護を要するもの | ||
3. 両眼の視力が0.02以下になっているもの | ||
4. 両上肢を腕関節以上で失ったもの | ||
5. 両下肢を足関節以上で失ったもの | ||
6. 前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの | ||
第3級 | 同245日分 | 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し、常に労務に服することができないもの |
2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に労務に服することができないもの | ||
3. 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になっているもの | ||
4. そしゃく又は言語の機能を廃しているもの | ||
5. 両手の手指の全部を失ったもの | ||
6. 第1号及び第2号に定めるもののほか、常に労務に服することができないものその他前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの |
傷病(補償)年金についてのポイント
1年6ヶ月を経過しても上記の傷病等級表に該当しない場合は、休業補償給付又は休業給付が引き続き支給されることとなります。
傷病補償年金又は傷病年金が支給されることになった場合に休業補償給付又は休業給付は継続して支給されません。ただし、従来から行われている療養補償給付又は療養給付は継続して行われます。
傷病補償年金又は傷病年金が支給される場合に、他の年金同様に、2ヶ月毎に偶数月に支給されます。2月・4月・6月・8月・10月・12月の年6回になります。
障害(補償)年金は、「業務上の傷病が治ったあと身体に一定の障害が残った場合に・・・」支給されるものであり、「傷病(補償)年金は、負傷又は疾病の療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治らない場合に・・・」支給されるものです。
また、障害(補償)年金の認定に用いるのは、1級から14級まで掲載されている労働者災害補償保険法施行規則別表第一の障害等級表であり、傷病(補償)年金はで1級から3級までの労働者災害補償保険法施行規則別表第2の傷病等級表になります。
傷病(補償)年金の手続きについて
傷病(補償)年金の手続きは、労働基準監督署の権限によって支給・不支給が決定されるため、特にありませんが、療養開始から1年6ヶ月を過ぎても、傷病が治っていないときは「傷病の状況等に関する届」を管轄の労働基準監督署に届出る必要があります。
また、療養開始後1年6か月を経過しても傷病(補償)年金の支給要件を満たしていない場合は、毎年1月分の休業(補償)給付を請求する際に、傷病の状態等に関する報告書(様式第16号の11)をあわせて提出する必要があります。
まとめ
傷病補償年金とは、労働者が業務上による負傷し、療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治らず、傷病等級表に定める傷病等級に該当し、その状態が継続しているときに支払われる年金です。
この傷病(補償)年金が支給される場合には、傷害等級に応じた傷病特別支給金や傷病特別年金も支給されます。
給付金額の計算については、傷病(補償)年金はボーナスを含まない給付基礎日額で計算され、傷病特別支給金は一時金、そして傷病特別年金については、ボーナスを基礎とした算定基礎日額で計算されます。給付金の支払いは、偶数月で2ヶ月毎に支払われます。
以上、「傷病(補償)年金とは?給付金額とは?についてズバリ解説!」の記事でした。
該当カテゴリー:労災保険
関連カテゴリー:雇用保険(失業保険)、健康保険