年金には併給(あわせての受取り)ができるものとできない組合せがあります。ここでは、労災年金・厚生年金・国民年金の併給です。その内容と事例にて解説します。

 

2015/10/08 16:05:08

労災年金と厚生年金や国民年金との併給について

労災年金と他の厚生年金や国民年金が支給されることを併給といいますが、同一事由においては、労災年金は全額支給ではなく、調整率というものがあり減額となります。

 

理由としては、労災保険料は全額事業主負担、厚生年金も半分は事業主負担でありながら、労災年金、厚生年金や国民年金などすべての年金を同一事由によって受取る。

 

そうすることにより、被災前に支給されていた賃金よりも高額になってしまうことは、二重の填補となり不合理であるため労災年金を減額して支給し、厚生年金等についてはそのまま全額を支給することになっています。

 

以下の表が労災年金と厚生年金・国民年金の調整率表です。

 

数字の入っていない部分は調整されませんので、労災年金は全額支給されます。

 

労災年金 障害補償年金・障害年金 遺族補償年金・遺族年金 傷病補償年金・傷病年金
社会保険の種類 併給される年金給付
厚生年金および国民年金 障害厚生年金および障害基礎年金 0.73 - 0.73
遺族厚生年金および遺族基礎年金 - 0.8 -
厚生年金 障害厚生年金 0.83 - 0.86
遺族厚生年金 - 0.84 -
国民年金 障害基礎年金 0.88 - 0.88
遺族基礎年金 - 0.88 -
例1

夫が亡くなり、遺族厚生年金と遺族基礎年金を受け取っている妻本人が、業務災害による労災年金の傷病補償年金を受給するようになってしまった場合には併給調整されませんので全額受給できます。

 

例2

自営業の夫が、障害基礎年金を受給(労災年金の受給権者に該当する障害)していて、会社勤めをしていた妻が業務や通勤災害で死亡した場合には、労災年金の遺族(補償)年金は併給調整されませんので全額受給できます。ただし、夫の年齢が、54歳以下、労災の遺族(補償)年金の受給権者に該当する障害ではない、また他に受給権者がいない場合は、遺族(補償)一時金の支給となりますが、この場合も減額されず満額支給されます。

 

例3

厚生年金および国民年金の障害厚生年金および障害基礎年金を受け取っている人が労災年金の障害補償年金を受け取る場合、障害厚生年金を全額受け取ることはできますが、労災年金は0.73の調整率がかけられますので、全額受け取ることはできません。

 

質疑応答

特別支給金についてですが、併給との関係はどうなりますか?

労災保険の給付に付随して支給される特別支給金は減額されずに満額支給されます。

 

すでに障害厚生年金を受け取っていて、別の事由で労災年金の障害補償年金を受取る場合に調整されますか?

この場合は、別の事由での傷病の場合は、労災年金は調整減額されずに満額支給されます。

 

 

 

まとめ

労災年金と他の厚生年金や国民年金が支給されることを併給といいます。
同一の事由においては、労災年金は全額支給されるものではなく、調整率というものがあり減額となってしまいます。

 

理由として以下のものがあります。

  • 労災保険料は全額事業主負担、厚生年金も半分は事業主負担であること
  • 労災年金、厚生年金や国民年金などすべての年金を同一事由によって受取ることにより、被災前に支給されていた賃金よりも高額になってしまうため

 

以上、「労災年金と厚生年金や国民年金の併給について教えてください」についての記事でした。

 

該当カテゴリー:労災保険
関連カテゴリー:雇用保険(失業保険)健康保険