2011年3月11日に起きた東日本の三陸沖大地震を皮切りにその後も各地で大きな地震が起こっています。中でも記憶に新しいのが2016年4月14日に起こった熊本地震です。こちらも津波の被害こそなかったものの震度7の大きさもあり、非常に大きな被害をもたらしました。

 

こういった大きな地震が起こったあと、すでに契約している方は、どのくらいの地震保険金額に契約していたのか確認したくなりますし、まだ契約されていない方は、契約すべきかどうか迷ったりするのではないでしょうか。

 

そこで地震保険にまだ契約されていない方に役立つよう、地震保険の概要や補償される主な損害と支払割合、地震保険金が支払われない例、地震保険料控除について解説してみましたのでご覧ください。
※2017年1月1日からの改正により、地震保険料や補償内容等が変更になりました。

 

地震保険の保険料についてはこちらの地震保険料の仕組みについて知っておこうをご覧ください。

 

2017/01/16 14:59:16

地震保険とは?その仕組みについて解説

まずは、地震保険の仕組みについてお伝えします。

 

地震保険とは、昭和41年(1966年)に制定された「地震保険法」があり、これを基に運営されています。地震保険を販売しているのは、民間損害保険会社ですが、一定水準を超えた保険金の支払いは政府からになりますので官民一体の制度になっているのが地震保険の特長です。

 

なぜ官民一体なの?

地震は規模の大きさにより支払が巨額になることがあり、損害保険会社だけでは支払いができない場合があります。

 

そこで一定額以上の損害に対しては政府が支払うようになっています。もちろん政府も無料で保険金を支払うわけではなく、再保険料として預かり支払いに備えています。

 

地震保険料の流れ

損害保険会社は、顧客から地震保険料を預かりますが、その100%は損害保険会社から切り離されます。

 

そして、「日本地震再保険株式会社」に再保険料として流れます。

 

日本地震再保険株式会社はさらに民間分(損害保険会社と日本地震再保険株式会社)の再々保険料と政府の再々保険料として分けます。

 

民間分については、日本地震再保険株式会社が管理・運用しますが、政府は地震保険特別会計として計上し支払に備えます。

 

再保険の割合
  • 日本地震再保険株式会社:約29%
  • 損害保険会社:約3%
  • 政府:約68%

 

もちろん政府としても上限なく支払うことはできないため支払の限度額は定められています。2017年1月現在の総支払上限額は、11.3兆円です。支払割合は以下の通りです。

 

 

  • 1回の地震により支払われる保険金が1,153億円までは、日本地震再保険株式会社が支払います。
  • 1,153億円を超え4,379億円に達するまでは日本地震再保険株式会社が1,258億円、損害保険会社が355億円、政府が1,613億円の支払い割合となります。つまり政府・民間が50%ずつ負担します。
  • 4,379億円を超えて11.3兆円までは、損害保険会社が43億円、日本地震再保険株式会社が289億円、政府10兆8,289億円の支払い割合になります。

 

地震保険料はどれだけ積立てられているのか

保険金支払いのために地震保険料はいくら積立されているのか気になるところなので調べてみました。

 

日本地震再保険株式会社のディスクロージャーによりますと以下のようになっています。

 

平成27年度末の残高です。

  • 日本地震再保険株式会社:4,645億円
  • 損害保険会社:781億円
  • 政府:1兆8,667億円

 

これらの積立額を超えた支払いがある場合には、再保険金の支払いのために借入れをすることができるようになっています。

 

地震保険は火災保険とセットでないと契約できない?

先ほど述べたように、地震保険は、国と損害保険会社が共同運営しているものですが、地震保険は単独では契約できません。あくまで火災保険とセットする必要があります。

 

保険金額については、火災保険金額の30%~50%の範囲で、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度額となります。

 

例えば火災保険が1000万円の契約ならば地震保険は500万円が限度ということになります。
※損害保険会社によっては地震上乗せ補償特約等により100%まで契約できる商品もあります。

 

また、地震保険は、建物への地震補償と家財への地震補償というように別々、もしくはセットで契約することが可能です。保険料については、建物の所在地と構造によって決まります。

 

地震保険で補償される主な損害

地震保険は、居住用建物やこれに収容される家財が地震・噴火、または津波にを原因として以下のような損害を被った場合に補償が受けられる保険です。

 

  • 地震の揺れのために建物や家財が壊れた場合
  • 地震により発生した火災のために建物や家財が壊れた場合
  • 地震により発生した地滑りやがけ崩れのために、建物や家財が壊れたり、埋もれた場合
  • 地震により河川の堤防やダムが決壊し洪水となったために、建物や家財が流されたり。浸水した場合
  • 地震・噴火による津波のために建物や家財が流されたり、壊れたり浸水した場合
  • 噴火による溶岩や火山灰、爆風等のために、建物や家財が壊れたり、焼けたり、埋もれた場合

地震保険が支払われない例

地震保険に加入しているからといっても何でも支払われるわけではありません。
特に一部損といって、建物の時価額の3%未満の場合は支払い対象になりません。

 

  • 損害の程度が一部損に至らない損害(建物は3%未満、家財は10%未満)
  • 門・塀・垣のみに生じた損害
  • 地震等の際における保険の対象の紛失・盗難によって生じた損害
  • 地震等が発生した日の翌日から起算して10日を経過した後に生じた損害等

 

地震保険は単独では契約できません

先ほども説明しましたが、地震保険は、単独で契約することができません。
必ず火災保険とセットで契約する必要があります。※少額短期保険は除く。

 

尚、火災保険契約時に地震保険を申し込まない場合には、「地震保険には申し込まない」ことを確認し、ハンコを押すことになっています。

 

地震保険の保険金額について

地震保険に加入する際の保険金額は、地震保険法によって、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で設定するように定められていますが、保険会社によっては「地震上乗せ補償特約等」があり、火災保険と同等の100%付加できるところもあります。

 

ただし、その場合においても建物については5,000万円、家財については1,000万円の限度額が設けられています。
※ マンション等の区分所有建物の場合は、各区分所有者ごとに限度額が適用されます。

 

 

地震保険の支払いはどうなっている

地震保険の建物や家財について生じた損害の支払い区分は、3区分から2017年1月以降に始まる契約から4区分に変更になっています。

 

なお、契約が一部損に至らない場合には、保険金の支払いはありません。

損害の程度

認定基準

支払われる保険金の額

建物

家財

全損

基礎、柱、壁、屋根等(以下、「主要構造部」といいます。)の損害の額が建物の時価額の 50%以上

 

焼失・流失した部分の床面積が建物の延床面積の 70%以上

家財の損害額が家財の時価額の80%以上になった場合 地震保険金額の100%が支払われます(時価が限度)

大半損

主要構造部の損害の額が建物の時価額の 40%以上 50%未満

 

焼失・流失した部分の床面積が建物の延床面積の50%以上 70%未満

家財の損害額が家財の時価額の60%以上80%以上になった場合 地震保険金額の60%が支払われます(時価※が限度)

小半損

主要構造部の損害の額が建物の時価額の 20%以上 40%未満

 

焼失・流失した部分の床面積が建物の延床面積の  20%以上 50%未満

家財の損害の額が家財全体の時価額の30%以上60%未満 地震保険金額の30%が支払われます(時価※が限度)

一部損

主要構造部の損害の額が建物の時価額の 3%以上 20%未満

 

建物が床上浸水または地盤面から 45cm を超える浸水を受け、 全損・大半損・小半損に至らない場合

家財の損害額が家財の時価額の10%以上30%未満になった場合 地震保険金額の5%が支払われます(時価が限度)

※ 時価とは、保険の対象と同等のものを再築または新たに購入するために必要な金額から、使用による消耗分を差し引いた金額をいいます。

地震保険の加入率

全国で地震保険にどのくらいの割合で加入されているのか調べてみました。
以下の表は「損害保険料率算出機構統計集平成24年度版」から抜粋したものを表にしたものです。世帯加入率は、平成24度末の地震保険保有証券件数を住民基本台帳に基づく世帯数で除したものです。

 

世帯加入率ベスト3

  • 1位:宮城県48.5%
  • 2位:愛知県:37.3%
  • 3位:東京:34.1%
都道府県 世帯加入率(%) 都道府県 世帯加入率(%) 都道府県 世帯加入率(%)
北海道 21.6 石川 22.5 岡山 18.8
青森 18.1 福井 21.8 広島 26.5
岩手 18.4 山梨 27 山口 20.5
宮城 48.5 長野 16.1 徳島 25.2
秋田 16.9 岐阜 30.5 香川 27.1
山形 17.3 静岡 27.6 愛媛 21
福島 24.3 愛知 37.3 高知 23.2
茨城 24.9 三重 25.6 福岡 30.2
栃木 22.5 滋賀 23.3 佐賀 16.6
群馬 16.7 京都 24.7 長崎 12.9
埼玉 28.1 大阪 28 熊本 26.5
千葉 30.9 兵庫 22.2 大分 20.1
東京 34.1 奈良 25.1 宮崎 21.8
神奈川 32.3 和歌山 22.5 鹿児島 23
新潟 19.1 鳥取 20.1 沖縄 13
富山 17.9 島根 13.4 合計 27.1

地震保険料控除が使える

支払われた地震保険料は、所定の金額まで税法上の地震保険料控除の対象となり所得税や住民税の控除が受けられます。平成28年12月現在のものです。

所得税

住民税

年間の支払保険料 控除額 年間の支払保険料 控除額
5万円以下 全額 5万円以下 支払保険料×1/2
5万円超 5万円 5万円超 2.5万円

地震保険の契約期間が1年を超え一括で保険料を支払っている場合には、支払った保険料を契約期間で除した額が毎年の控除対象額となります。分割払の場合には、実際にその年中に支払った保険料が、控除対象額になります。

 

地震保険料控除についてはこちらの地震保険料の控除について知っておきたいポイントもご覧ください。

地震保険のまとめ

地震保険は地震保険法を基に運営されており、地震により建物や家財が壊れた場合や地震で発生した火災のために建物や家財が壊れた場合、地滑りやがけ崩れで建物が損壊した場合などのときに保険金が支払われます。また支払われないものとしては、門・塀・垣のみに生じた損害などです。

 

以下箇条書きにまとめました。

  • 地震保険の支払いについては限度額があります。総額で11.3兆円です。
  • 地震保険は単独では契約できません。あくまで火災保険とセットする必要があります。
  • 保険金額については、火災保険金額の30%~50%の範囲で、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度額となります。
  • 地震保険の建物や家財について生じた損害の支払い区分は、3区分から2017年1月以降に始まる契約から全損、大半損、小半損、一部損の4区分に変更になっています。

 

以上、必ず知っておきたい地震保険の大事なポイントについての記事でした。

 

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